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共有持分の売却価額の算定方法

共有持分を第三者(他の持分権者など)に買い取ってもらう場合には,自己持分の価格を適正な金額として評価する必要があります。不動産の評価額が決まった場合には,持分の買取の合意書(売買契約書)などの書面を交わし,持分権(所有権)を買取をした者へ移転させます(所有権移転登記も必要になります)。

共有持分の売却価額の決定プロセス

共有持分売却における売却価額の決定プロセスは以下の通りです。共有持分の評価額算定にあたり、まず、共有不動産の全体の評価額を適正に算定する必要があります。

①当事者間の評価合意
当事者間で価格について合意している場合、合意価格を基準とする。

②私的鑑定による評価
当事者間で価格について合意しない場合、不動産鑑定士に私的鑑定を依頼して,他の共有者の納得を得ることになります。

③裁判所を通じた鑑定による評価
裁判所が当事者と関係のない中立の不動産鑑定士を鑑定人に選任し、鑑定を行って鑑定書を作成して裁判所に提出します。裁判所はこの鑑定書を基にして適正な金額を定めることになります(現実には鑑定書とほぼ同一であることがほとんど。)。

①当事者間の評価合意

早期解決のためには,不動産の評価額について評価合意(当事者がそれぞれ納得した金額を不動産の評価額とする)を目指すことが重要になります。そのためには,実際の取引価格(実勢価格)にできる限り近づけることが必要です。

取引価格を判断するために有用な手段として,不動産会社による簡易査定が多く用いられています。簡易査定とは,不動産会社が登記情報や現地調査,過去の取引事例を参考に,実際の販売価格を算定する方法です。査定の信用性を高めるためには,信頼のある業者の査定で,かつ2社以上査定を取ることが望ましいでしょう。複数の信頼できる査定をベースにして,評価合意ができるように目指していくことになります。

②私的鑑定による評価

共有者間での対立が大きく,評価合意ができない場合は,不動産鑑定士に私的鑑定を依頼して,他の共有者の納得を得ることになります。

鑑定費用については,相当の費用が掛かることもありますので,まずはあまり費用をかけずに評価合意ができないかを検討するとよいでしょう。

③裁判所を通じた鑑定による評価

交渉で納得できないような場合には,共有物分割訴訟を起こして,裁判所を通じた鑑定を行うことになります。

なお、競売の判決に至った場合、競売による売却は金額が低くなる傾向にあり、不動産鑑定評価基準において一般に30%程度減価するとされています。

不動産評価の方法

客観的な不動産評価の参考となる,一定の基準がありますので,代表的なものを紹介します。以下の方法を一つ,若しくはいくつかを組み合わせて,適正な評価方法を算出することになります。

  1. 取引価格(実勢価格)
    過去の取引事例や近隣相場などを基準として決める価格です。比較的身近な金額であり,これが客観的に算定できるのであれば,共有者間でも納得が得られやすいでしょう。ただし,この実勢価額を算定することは容易ではありません。

  2. 公示価格
    年に1回,国土交通省が公表している土地の価格です。公共事業用の土地の取得価格を示すもので,土地の適正な価格を算定するための有用な指標となります。標準的な土地(標準地)を選択し,1㎡あたりの価格にて公表されます。ただし,全国すべての土地において公表されるわけではないことに注意が必要です。

  3. 路線価
    路線価とは,相続税・贈与税の財産を評価する場合に適用される基準です。市街地的形態を形成する地域の路線に面する1㎡あたりの価格によって表示されます。毎年7月に国税庁が路線価図・評価倍率表から構成される財産評価基準書によって価格が公表されます。概ね,地価公示価格の80%程度の価格水準となっています。

  4. 固定資産税評価額
    各市町村において,固定資産税を算定する際の基準となる価格となります。街路に接している標準的な土地1㎡あたりの価格が表示されています。3年に一度,更新がなされています。固定資産評価額は,概ね地価公示価格の70%程度の価格水準とされています。

不動産鑑定士による鑑定評価方法

不動産鑑定士による鑑定の場合,以下のような方法を用いて(組み合わせて)不動産の評価を行うことになります。

  1. 原価法
    評価対象となる不動産を仮に再調達した場合の費用(同じ建物を再度立てた場合にかかる費用など)に着目して,価格を算出する方法です。

  2. 取引事例比較法
    評価対象の不動産と条件が類似した不動産の,過去の取引事例を参考にして価格を算出する方法です。

  3. 収益還元法
    不動産によってもたらされる利益を基に価格を算出する方法です。これには,直接還元法とDCF法の2つの方法があります。

どのような鑑定手法を行うかは,不動産鑑定士の判断となりますので,具体的な内容については鑑定士に相談されることをお勧めします。

共有持分の売却価額算定における留意点

共有持分の売却価額の算定は、まず共有不動産全体を評価し、共有持分割合を乗じて共有持分の価額を算定する必要があります。

共有補正

共有状態の不動産の場合,単独所有の不動産と比べて,管理・処分等に法律上の制約が生じることで,経済的価値が低くなってしまうため、共有持分のみの価額を評価する場合,通常取引価格から2割程度の減額補正がなされることが通常です(共有補正)。

全面的価格賠償における限定価格

共有者の1名が全ての共有持分を買い取って単独所有にする全面的価格賠償においては、その取得者にとって持分の価値は正常な取引価格よりも高いことになります(単独所有により,管理・処分の制約がなくなるため。)。そのような場合には,限定価格(正常な取引価格よりも高い金額)とよばれる金額により,不動産評価(売却価格)がなされることもあります。

したがって,持分を買い取ってもらう場合には,なるべく単独所有を予定している別の持分権者に売却することを検討すべきでしょう。

共有状態の解消を目指す方へ

日比谷ステーション法律事務所では、共有状態の解消に向けて依頼者の利益のために最善を尽くします。
共有物分割協議、共有物分割請求訴訟のいずれがよいのか、また、どのような主張・立証をすれば裁判上最も有利になるのかも含めて総合的に検討した上で対応いたしますので、お気軽にご相談ください。 03-5293-1775