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収益物件の共有物分割請求のポイント

収益物件とは,不動産から賃料(家賃)などの収益を得る目的の物件のことをいいます。居住用の物件とは異なり,一定期間(毎月,毎年)に定期の賃料が発生すること,賃借人等がいるため不動産の管理について別個の考慮が必要となります。また,不動産全体を売却する場合にどのように売却金額を算定するか,といった点の判断も重要になります。

共有不動産から発生した賃料(家賃)の分配方法

収益物件の分割等に関するポイントの一つ目は,共有不動産から発生した賃料をどのように分配するかという点です。

STEP01.現在の賃料額と,未精算の賃料額を確認する

収益物件について,どのような権利関係(通常は建物の賃貸借契約)が成立しているのかを確認することが重要です。

共有者の1名が賃料を他の共有者に分配していないような場合には,過去の未清算となっている賃料額も確定させることが必要になります。特に未払の賃料請求については,10年間の消滅時効にかかってしまう可能性がありますので注意が必要です。

まずは,賃貸借契約書や,賃料口座の通帳といった客観的資料を確認し,金額を確定します。手元に資料がない場合には,資料を所持している共有者に開示を求めることが必要です。

STEP02.収益物件の管理状況を確認する

収益物件に多数の賃借人がいる場合,物件の管理状況を確認することも重要です。共有物件において,賃貸借契約を締結やこれを解除するには共有持分権者の「持分の価格」の過半数の同意が必要になります。この同意の有無(契約が有効か否か)につき確認することが必要な場合もあるでしょう。

また,共有者自身が収益物件の管理をせずに,管理会社に管理を任せることもあります。その場合,管理契約の内容,物件の管理状況,賃料収入や費用支出の管理などについて,把握することが必要になります。

STEP03.未清算の賃料を請求する

未清算の賃料があることが発覚した場合には,賃料を清算していない(独り占めしている)共有者がいる場合には,未精算の賃料につき,持分の価格割合に応じて支払うように請求することになります(不当利得に基づく返還請求)。

なお,不当利得に基づく返還請求権は,10年間経過すると消滅時効が成立し,消滅してしまうことがありますので注意が必要です。

まずは,一方の共有者に対して未払いの賃料については他の共有者に配分する義務があることを伝え,交渉を行ないます。交渉がまとまったら,支払額や支払方法などの合意内容について明記した和解合意書などの書面を交わしておきましょう。

STEP04.訴訟によって清算する

協議がまとまらない場合には,不当利得返還請求訴訟共有物分割請求訴訟を起こし,清算を求めることになります。なお,不当利得返還請求は賃料の分配のみを求める場合,共有物分割請求訴訟は,それに加えて共有不動産自体の分割まで求める場合に利用する手続となります。

なお,賃貸借契約書などの客観的証拠を先方が出さない場合には,裁判所の手続(文書送付嘱託や文書提出命令)などの手段を用いることを検討します。

共有の賃貸物件を売却する際のポイント

共有状態を解消して,法律関係を清算してしまうべき場合も出てきます。そのような場合には,共有不動産を売却するなどして,全体を処分することが必要です。共有の賃貸物件を売却する際のポイントは以下のとおりです。

共有不動産全体を売却した方が高額になる

共有不動産の売却処分の内容には,持分の売却と共有不動産全体の売却の2種類があります。

持分の売却のみですと依然として共有状態が残ってしまうため,不動産の利用には難が生じます。そのため、持分のみを売却する場合は,共有不動産全体を売却して持分の価格で売却代金を分け合うより,かなり低額になってしまいます。したがって,経済的メリットを目指すのであれば共有不動産全体の売却を目指すべきでしょう。ただし,共有不動産の売却には,共有者全員の同意が必要になるため,1名でも反対者がいる場合にはこの方法はとれません。

競売より任意売却の方が売却代金が高い傾向にある

共有物分割請求訴訟を起こし,裁判所から共有不動産を売却するように命じる判決が出ることがあります。判決が出ても,一部の共有者が売却に協力しない場合には,裁判所を通じて強制的に不動産を売却する手続(競売手続)を取ることになります。ただ,競売手続は実際の売却まで相当の期間がかかりますし(半年程度から1年程度までかかることもあります),任意売却(裁判所を介さないで,共有者全員で任意に売却すること)と比べると,売却代金は低くなってしまいます。

早期解決,経済的メリットを目指すのであれば,なるべく任意売却にするよう,共有者間で合意を取った方がよいでしょう。

誰かが買い取る場合には,不動産の評価方法を決める必要がある

共有不動産については,一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る場合もあります。その場合,他の共有者がどのような金額で買い取るかを決めることが重要になります。

不動産の金銭的な評価の方法には,様々なものがあります。以下,代表的な不動産評価の方法です。

評価合意

共有不動産の価格を全員で合意するという方法です。合意した金額に基づいて,共有不動産の持分に応じて,売却・買取代金を決定することになります。もっとも早期かつ経済的に負担の少ない方法が評価合意といえます。ただし,共有者間に金額面での対立がある場合には,この方法を用いることはできません。

代表的な不動産の評価方法

客観的な不動産評価の参考となる,一定の基準がありますので,代表的なものを紹介します。以下の方法を一つ,若しくはいくつかを組み合わせて,適正な評価方法を算出することになります。

基準価格 内容
公示価格 年に1回,国土交通省が公表している土地の価格です。公共事業用の土地の取得価格を示すもので,土地の適正な価格を算定するための有用な指標となります。標準的な土地(標準地)を選択し,1㎡あたりの価格にて公表されます。
ただし,全国すべての土地において公表されるわけではないことに注意が必要です。
路線価 路線価とは,相続税・贈与税の財産を評価する場合に適用される基準です。市街地的形態を形成する地域の路線に面する1㎡あたりの価格によって表示されます。毎年7月に国税庁が路線価図・評価倍率表から構成される財産評価基準書によって価格が公表されます。
概ね,地価公示価格の80%程度の価格水準となっています。
固定資産価格 各市町村において,固定資産税を算定する際の基準となる価格となります。街路に接している標準的な土地1㎡あたりの価格が表示されています。3年に一度,更新がなされています。
固定資産評価額は,概ね地価公示価格の70%程度の価格水準とされています。
実勢価格 過去の取引事例や近隣相場などを基準として決める価格です。比較的身近な金額であり,これが客観的に算定できるのであれば,共有者間でも納得が得られやすいでしょう。
ただし,この実勢価額を算定することは容易ではありません。

信頼できる不動産会社において複数の査定を取り、評価合意を目指す

実勢価格を判断するために有用な手段として,不動産会社による簡易査定が多く用いられています。簡易査定とは,不動産会社が登記情報や現地調査,過去の取引事例を参考に,実際の販売価格を算定する方法です。査定の信用性を高めるためには,信頼のある業者の査定で,かつ2社以上査定を取ることが望ましいでしょう。複数の信頼できる査定をベースにして,評価合意ができるように目指していくことになります。

評価合意が難しい場合には,不動産鑑定を行う

共有者間での対立が大きく,評価合意ができない場合は,不動産鑑定士に私的鑑定を依頼して,他の共有者の納得を得ることになります。さらに,交渉で納得できないような場合には,共有物分割訴訟を起こして,裁判所を通じた鑑定を行うことになります。不動産鑑定士による鑑定の場合,以下のような方法を用いて(組み合わせて)不動産の評価を行うことになります。

評価方法 内容
原価法 評価対象となる不動産を仮に再調達した場合の費用(同じ建物を再度立てた場合にかかる費用など)に着目して,価格を算出する方法です。
取引事例比較法 評価対象の不動産と条件が類似した不動産の,過去の取引事例を参考にして価格を算出する方法です。
収益還元法 不動産によってもたらされる利益を基に価格を算出する方法です。これには,直接還元法とDCF法の2つの方法があります。

どのような鑑定手法を行うかは,不動産鑑定士の判断となりますので,具体的な内容については鑑定士に相談されることをお勧めします。鑑定費用については,相当の費用が掛かることもありますので,まずはあまり費用をかけずに評価合意ができないかを検討してもよいでしょう。

収益物件の共有物分割をご検討の方へ

日比谷ステーション法律事務所では、収益物件を中心に,共有不動産の様々な利用状態や種類ごとの適切な解決方法を提案し,問題の解決に当たっています。
共有物分割協議、共有物分割請求訴訟のいずれがよいのか、また、どのような主張・立証をすれば裁判上最も有利になるのかも含めて総合的に検討した上で対応いたしますので、お気軽にご相談ください。 03-5293-1775
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