共有不動産の共有持分の処分を弁護士に依頼する場合と共有持分買取業者に買い取ってもらう場合のそれぞれのメリット・デメリット
共有不動産の共有持分をお持ちの場合の処分方法については、①弁護士に共有物分割請求を依頼する方法と②共有持分買取業者に共有持分を買い取ってもらう方法が考えられますが、本稿では、それぞれの方法のメリット・デメリットを検討していきます。
弁護士に共有物分割請求を依頼するメリット及び共有持分買取業者に買い取ってもらうデメリット
弁護士に依頼すると現物分割や賠償分割(全面的価格賠償)のように処分以外の方法もあるが、共有持分買取業者は共有持分を買い取ることしかできない
共有状態を解消するための手続を共有物分割請求といいますが、共有物分割の方法としては、①共有物の現物を分割する方法(現物分割)、②共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法(賠償分割(全面的価格賠償))、③第三者に取得してもらい、その代金を分割する方法(任意売却又は競売)があります。
共有土地の面積が広い場合には、共有者間で協議をして分筆した上で、それぞれが一筆の土地を所有するという解決方法(現物分割)もありますし、ご自身が相手方から共有持分を買い取るという解決方法(賠償分割(全面的価格賠償))もあります。弁護士に依頼すれば、このような現物分割や賠償分割(全面的価格賠償)を交渉や共有物分割請求訴訟によって実現することができます。他方、共有持分買取業者に買い取ってもらう場合には、現物分割や賠償分割(全面的価格賠償)によって解決するという選択肢はありません。
共有持分買取業者の買取金額は非常に低額になることが一般的であるが、弁護士に依頼した場合には、共有不動産の時価に依頼者の共有持分比率を乗じた金額に近い金額を獲得できることが見込まれる
共有持分買取業者は、共有不動産の共有持分を買い取った後、他の共有者からも共有持分の買取を目指し、共有不動産の共有持分を全部取得後、再開発して建物を建築し、販売することで利益を得るというのが多いパターンです。共有持分買取業者は、共有持分の一部を取得しても、他の共有者からすんなり共有持分を取得できるわけではないので、他の共有者に対し共有物分割請求訴訟を提起するなどして残りの共有持分の取得を目指します。この残りの共有持分の取得には、共有不動産の時価に他の共有者の共有持分比率を乗じた金額を買取金額として供出する可能性があるほか、弁護士費用がかかるため、最初の共有持分取得の段階で相当安く買い取らないと利益が出なくなります。
したがって、共有持分買取業者からの買取金額は、共有不動産の時価に共有持分比率を乗じた金額の50%以下になることが一般的です。共有不動産が高額である場合に、時価の半額以下で処分すると非常にもったいないことになってしまいます。
他方、弁護士に共有物分割請求を依頼した場合、交渉又は裁判上の和解によって任意売却が実現できれば、依頼者は、共有不動産の時価に依頼者の共有持分比率を乗じた金額から、不動産仲介手数料や弁護士費用の諸経費を引いた金額を獲得できます。不動産仲介手数料も弁護士費用も、それぞれ獲得金額の数%程度であることが多く、共有不動産が低額でなければ、共有持分買取業者に買い取ってもらう場合よりも高い金額を獲得できることになります。
共有持分買取業者に買い取ってもらうメリット及び弁護士に共有物分割請求を依頼するデメリット
共有持分買取業者に買い取ってもらう場合には、売却すればその後やることはなくなるが、弁護士に共有物分割請求を依頼する場合には、解決まで時間がかかる
弁護士に共有物分割請求を依頼した場合、まず、他の共有者と協議をする必要があり、協議が調わなかった場合に共有物分割請求訴訟を提起することになります。共有物分割請求訴訟を提起した場合には、訴訟提起後、1ヶ月から2ヶ月後に第1回期日が開かれ、その後、約1ヶ月毎に裁判期日が開かれます。弁護士に依頼した場合には、早ければ解決まで数ヶ月ですが、長ければ1年以上かかる場合もあります。
これに対し、共有持分買取業者に買い取ってもらう場合には、共有持分を売ってしまえばそれで終了なので、その後やることはありません。共有不動産の問題から早く開放されるというのがメリットです。
共有不動産の時価が低い場合には、弁護士に依頼すると費用対効果に見合わなくなる可能性がある
弁護士報酬は、依頼者が獲得した経済的利益に一定の比率を乗じた額で算定されるのが一般的ですが、その算定結果があまりに低額ですと、弁護士にとっても投じる労力に対して収益が見合わないため、最低報酬額を定めているところが多くあります。その場合ですと最低報酬額は一定額なので、共有不動産の時価が低い場合には、共有持分の処分によって獲得した金額から弁護士費用を差し引くとほとんど残らなかったり、場合によっては赤字になってしまう可能性もあります。
他方、共有持分買取業者に買い取ってもらう場合にも、共有不動産の時価が低い物件の場合には、共有持分買取業者は買い取らないか、買い取るとしても非常に低い金額でしか買い取らないということになります。
共有不動産の時価が低い場合には、弁護士費用がどれくらいかかるのか十分に確認した上で、依頼されるか検討する必要があります。
結論
共有不動産の時価が低い場合、一般には、共有持分買取業者に買い取ってもらうより、弁護士に依頼した方が多くの金額を獲得できると考えられます。高額な不動産については、より差が出るので、弁護士に依頼することを検討した方が良さそうです。ただし、獲得金額が大幅に少なくなっても、一刻も早く共有不動産の問題から解放されたいという場合には、共有持分買取業者に買い取ってもらうことを検討した方が良いでしょう。
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