代償分割(価額賠償)
代償分割は、共有不動産を特定の者が取得し,その者が他の共有者に相当の代償金を支払う方法です。
代償分割(価額賠償)の要件
代償分割(価額賠償)には,2つの種類があります。
- 一部価格賠償
現物分割で共有者が取得する金額に差が生じる場合で,持分以上の価額の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせる方法
- 全面的価格賠償
共有者の1名が単独で不動産を取得し,他の者が共有持分の価額に相当する代償金のみを取得する方法
なお,後者の全面的価格賠償の方法をとるためには,最高裁判所が定める一定の基準を満たす必要があります(最一判平成8年10月31日判決)。
全面的価格賠償の要件
全面的価格賠償の方法をとるためには次の要件を満たす必要があります。・特定の共有者が取得する相当な理由
・代償金の支払能力
・適正な買取価格の提示などによって,共有者間の実質的公平を害さないこと
賠償額の算定
全面的価格賠償における賠償額の決定プロセスは次の通りです。
①当事者間の合意
当事者間で価格について合意している場合、合意価格を基準とする。
②鑑定人による評価
当事者間で価格について合意しない場合、裁判所が当事者と関係のない中立の不動産鑑定士を鑑定人に選任し、鑑定を行って鑑定書を作成して裁判所に提出する。
③裁判所による判断
裁判所が鑑定書を基にして適正な金額を定める(現実には鑑定書とほぼ同一であることがほとんど。)
なお、不動産の評価において、共有状態にある不動産は評価減される(共有減価)のが一般ですが、代償分割(価格賠償)によって共有状態は解消され単独所有になるため、通常共有減価は適用されません。
担保権の取り扱い
共有不動産に抵当権等の担保権が設定されている場合、代償分割(価格賠償)によって単独所有する人がこの担保を負担することになります。この点、全面的価格賠償の賠償額の算定においては、単独所有することになる人が、被担保債権にかかる債務を履行できないリスクの大きさを検討すべきとされています。そして、考慮すべきリスクがある場合、それを共有者間でどのように負担させるのが公平であるかを検討し、賠償額へ反映することになります。
賠償額の支払い確保
代償分割(価格賠償)では、賠償機の支払いを伴います。そこで、取得者が賠償金を支払わないなどが起きないよう、次のような支払いを確保する措置が必要となってきます。
①賠償金の支払いと共有持分移転登記の引き換え給付
②支払い期限を過ぎた場合の失効
③担保の提供
④賠償金の支払いを先に行う
代償分割(価格賠償)メリット・デメリット
代償分割(価格賠償)のメリット,デメリットは以下のとおりです。
メリット
共有者の一人が,共有不動産を利用したい場合にそのニーズを満たすことができます。一方で,不動産の利用に価値がない共有者も持分に相当する価格をお金で受け取ることができますので,そのニーズも満たすことができます。
デメリット
・共有不動産を取得する者が,代償金を支払うだけの資力を有している必要があります。
・代償金の額(不動産の評価額)をめぐって,争いが生じることがあります。話合いがまとまらない場合,不動産鑑定(不動産鑑定士に依頼)が必要になり,時間と費用面でのコストがかかります。
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