共有物分割訴訟で競売を命じる判決をもらって競売手続きをとる方法
共有物の現金化に関する話合いがまとまらない場合には,裁判所に共有物分割請求訴訟を起こし,共有不動産を競売(裁判所を通じて強制的に売却する手続)する旨の判決をもらい,現金化を目指すことになります。
裁判所が競売を命じる判決を得るには?
競売を命じる判決を得るためには、当事者は換価分割(代金分割)による分割を主張していくことになります。ただし、共有物分割請求訴訟においては裁判所が分割方法を決定するため、当事者の主張は考慮されますが、裁判所の意思決定を拘束するものではありません。
裁判所による分割方法の検討順位
裁判所による分割方法の検討順位は以下の通りとなっており、換価分割(代金分割)の検討順位は最下位となっています。代償分割(価格賠償)、現物分割ができない場合に採用される分割方法になり、かつ、和解できずに判決まで進んだ場合にのみ競売の判決となります。
1位:代償分割(価格賠償)
代償分割を希望する共有者がいる場合、その充足要件を満たしているか判断されます。
具体的には,特定の共有者が取得する相当な理由や,代償金の支払能力,適正な買取価格の提示などによって,共有者間の実質的公平を害さないことが必要となります。
2位:現物分割
現物分割の充足要件を満たしているか判断されます。
具体的には、不動産の分筆が禁止されている場合(不分割特約)や建物などのケースで現物分割ができないこともあります。また、現物分割をすると、土地が細かくなりすぎるなどの事情で、共有物の価値が著しく減少してしまうケースがあります。
3位:換価分割(代金分割)
現物分割が認定されない場合、換価分割(代金分割)を選択します。
なお、競売による売却は金額が低くなる傾向にあり、不動産鑑定評価基準において一般に30%程度減価するとされています。
共有不動産の競売申立て
共有物分割訴訟において競売を命じる判決が出たとしても、実際に競売と分割の手続きを進めるためには、共有物の分割を求める者が、地方裁判所に対して不動産競売の申立をする必要があります。
競売申立書の提出
競売の申立には競売申立書の提出が必要になり、以下の書類を揃えて提出することになります。
- 不動産登記事項証明書(発行後1ヶ月以内のもの)
- 共有持分権者の住民票(全員分)
- 競売を命じる判決書正本
- 公図の写し
- 建物の図面
- 住宅地図など
- 不動産競売の進行に関する照会書
- 固定資産税評価証明書
裁判所による競売手続きから配当分配までの流れ
競売から配当分配までの流れは以下の通りです。
競売手続きの流れ
実際の競売手続きは以下の流れで進んでいき、最終的に不動産の所有権が共有者らから落札者に移転します。
- 裁判所の執行官が、対象不動産の現況を調査して、「現況調査報告書」という書類を作成する。
- 専門の不動産鑑定士が対象不動産の鑑定評価を行って、「評価書」を作成する。
- 裁判所がこの評価書をもとにして、不動産の売却基準額を決めて、「物件明細書」を作成する。
- 入札期間と開札期日、売却決定期日を決定して、入札を開始する。
- 入札期間中、不動産の購入を希望する入札者が最低売却価格以上の金額で入札を行い、入札期間が終わったら開札を行う。
- 最高価格で入札した人が不動産を購入することができる権利を得る。
- 裁判所が、最高価格での落札人への売却許可決定を出し、落札者が定まった代金を納付する。
配当手続き
不動産の競売手続きが終了して代金が支払われたら、その代金を共有持分割合に応じて分配します。ただ、共益費用の支払いや抵当権者などに対する支払いが必要になるので、これらを差し引いた金額が実際に共有者に配当される金額となります。
競売手続きによる現金化のメリット・デメリット
競売手続きによる現金化のメリット・デメリットは,以下のとおりです。
メリット
一部の共有者が売却に反対する場合であっても,強制的に不動産全体を売却することが可能です。また、不動産全体を売却してその代金を分け合うため,共有者間の不公平は生じにくいといえます。
デメリット
共有物分割請求訴訟を提起して,判決をもらい,そこから不動産の競売手続を進めることになるため,ある程度の時間がかかることが通常です(平均的には,6ヶ月から1年程度の期間となります。ただし,交渉の進め方等により,より短期で解決する場合もあります)。さらに,競売による売却の場合,裁判所を介さない任意売却の場合と比べて,売却価額が低くなってしまう可能性があります。
共有物分割請求訴訟をご検討の方へ
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